自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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運動と労働による健康は、人生での成功に大きく影響する

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●仕事を通してしか生まれない実践的「知的素養」

みじめな境遇から身を起こし、学問や芸術の分野で名声を得た人間の例を、これまでに数多く見てきた。それらの例からもわかるように、高い知的素養と労働とは切っても切り離せない問柄にある。

適度の労働は健康によく、人間の本性にもかなっている。勉強が精神を鍛えるように、労働は肉体を鍛える。有閑階級でさえ、ある程度は働かざるを得ないの倦怠感から解放されたいというのもその理由の一つだが、大部分の人間は、抗しがたい本能的欲求を満足させようとして働くのである。

ダニエル・マルサスは息子に「大学では、知識の修得に力を入れると同時にスポーツにも精を出せ」と説いた。スポーツは、精神の活動を活発にする最良の手段というわけだ。マルサスはさらにこう続けた。

「さまざまな知識にふれ、自然や芸術を学べば、おまえの心は豊かになり、精神の力は増すだろう。だが、クリケット競技がおまえの肉体に同じような喜びと力を与えてくれたら、私はなおさら満足だ。運動の面でも人に抜きん出るよう努力したまえ。人間というものは、足で立ち、体を動かしている時に、いちばん精神の喜びを感じるものだから」

健康な体を持っているかどうかは、一般に考えられている以上に現実社会での成功を左右する。騎兵隊長ホドソンは、イギリス本国の友人に次のような手紙を書き送っている。

「インドで私が成功するとしたら、それは胃腸が丈夫なためでしょう」

確かにどんな職業でも、仕事を続けていくには胃腸の働きの善し悪しが大きな影響を与える。知的労働に携わる人も、健康面には十分留意する必要がある。

最近は、自分を不幸だと思いこみ、不満をつのらせた結果、怠惰や妄想の世界に逃避する若者が増えている。彼らは現実の社会を軽蔑し、世間一般のならわしを嫌悪する。これは、若者が肉体の鍛練をおろそかにしているためだ。アメリカの教育家チャニングはこう指摘した。

「わが国では、多くの若者が絶望という学校の中で育っています」

若者のこのような「萎黄病(鉄欠乏性の貧血)」この治療法はたった一つしかない――それは体を動かすこと、つまり運動し、労働し、肉体を鍛え上げることなのだ。

 - 8章 - 自己修養