自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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ときに自分の足どりを確かめてみること

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節酒ができないなら酒を断つべき

ヒュー・ミラーは、若いころある決心をして、強い誘惑からわが身を救ったという。

当時ミラーは石切場で働いていた。彼の同僚はみな酒を飲むのを毎日の楽しみにしていた。ある日のこと、ウイスキーをふるまわれた彼は、コップで二杯いっきに飲み干してしまった。ところが、家に戻り愛読書である『ベーコン随筆集』を開くと、中の文字が目の前で躍り出し、さっぱり意味がつかめないのである。ミラーは後に語っている。

「あのときの私のていたらくときたら、まさに堕落そのものでした。非は自分にあるのですが、何しろしばらくは体が沈みこむような感じで、ふだんのように頭が働きません。決心などできるような状態でもありませんでしたが、とにかくその時、私は心に誓いました。″今度は絶対に、酒におぼれて知的な喜びを棒に振るような真似はすまい″とね。そして運よく、私はその決意を守ってこれました」

このような決心が往々にして人生の転機となり、将来の名声の基礎を固めるものだ。あの時誘惑に打ち勝とうと気を引き締めなかったら、ミラーの人生は暗礁に乗り上げていたかもしれない。若者に限らず誰でも、このような危険な誘惑には常に警戒の目を光らせていなくてはならない。

ことに飲酒は、誘惑の中でも最悪の部類に入る。人生を台なしにしかねないものだ。

ウォルター・スコットはつねづね、「あらゆる悪徳の中でも、飲酒ほど成功の妨げになるものはない」と語っている。

そればかりでなく、飲酒は金の浪費につながり、人間の品性と健康を破壊し、誠実な生活までをもぶち壊す。節酒ができないなら酒を断つべきだ。

サミュエル・ジョンソンは自らの習慣についてこう述べている。

「私は禁酒ならできるが、控え目に飲むなんて不可能だ」

この言葉は、多くの人たちにも当てはまるだろう。

悪癖に敢然と闘って勝つには、世間並みの思慮分別だけでは十分といえない。もちろんそれも役には立つが、さらに高いモラルを身につける必要もある。自分の考えや行動に高い規準を設け、悪習を改めるのとあわせて道義心を強め、みがき上げていかねばならない。

そのために若者は、自分自身をよく学ぶことが大切だ。自分の足どりを確かめ、自分で決めた規則と実際の考えや行動が合致しているかどうかを見定めるべきだ。人生でいちばん価値ある努力は、現在のちっぽけな満足に安住せず、将来もっとすばらしい満足を得ようと励むことである。それこそが、人間にとっていちばん貴い自己修養に他ならない。ある詩人はこう歌っている。

真の栄光は

黙々と克己に努めてこそ与えられる

いかなる征服者もそれなくしては

ただの奴隷と何一つ変わらない

 

 - 7章 - 金の知恵