自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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ビジネスを成功させる六つの原則②

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●手際の良さ:仕事を明日に延ばすと三倍時間がかかる

手際のよさもビジネスの成功には欠かせない。この能力があれば、仕事の量が多くともそれを申し分なく果たしていける。

聖職者のリチャード・セシルは、「手際のよさとは、箱に物を詰める仕事に似ている。荷作り上手は、下手な人間の三倍近くも多くの荷物を入れられる」と述べた。セシルは、仕事をてきぱきこなすことにかけては非凡な才能を発揮した。「多くの仕事を処理するいちばんの近道は、一度に一つしか仕事をしないことだ」と彼はいう。

しかも、彼は一つの仕事に着手したら、やりかけのまま放置して後で暇にまかせて片付けるというようにだらしない真似は絶対にしなかった。緊急な仕事なら、その一部を手抜きするよりむしろ食事や睡眠を省くほうを選んだくらいである。

オランダの政治家デ・ヴィットの処世訓もセシルと似ている。

「一回に一つの仕事だけを行なえ。もし急いでことを運ばねばならないハメになったら、その始末がつくまで他の仕事は一切考えない。家の中のゴタゴタに気づいたら、とにかく一気にケリをつけてしまうのだ」

あるフランスの大臣は、事務処理が迅速なことで有名だった。だが彼は一方で、歓楽街へ三日にあげずひっきりなしに顔を出すことでも知られていた。「両方ともうまくやってのけられるのはなぜか」とたずねられて、彼は答えた。

今日なすべきことを明日に延ばすな、という教えを忠実に守っているだけのことさ」

ところが、あるイギリスの大臣はこの順序をひっくり返していたそうだ。つまり、「明日まで延ばせることは今日処理すべきでない」と考えていたのだ。この憐れな政治家の名は、いまでは忘れ去られたが、こうした手合いはけっこう多い。今日の課題をグズグズと一日延ばしにしていくのは、怠け者や敗北者の習慣だ。しかも彼らは、自分の仕事をすぐ他人まかせにしようとする。

だが、他人を信用しすぎるとひどい目にあう場合も多い。とくに重要な仕事は、自分で受け持つべきだ。格言にもある通り、「ぜひともやっておきたい仕事は自分で呆たし、どうでもよい仕事を他人にまかせる」べきなのだ。

ある地方に、怠け者の地主が住んでいた。所有している土地からは一年に五〇〇ポンドの地代を得ていたが、しだいに借金がかさんだため、土地の半分を売り、残りを働き者の農民に二十年契約で貸した。契約期限の切れるころ農民は地主の家へ行き、地代を払いながら、借地を自分に売ってくれないかと頼んだ。

「おまえが土地を買うだって?」と地主は驚いたが、農民は何食わぬ顔でこう答えた。

「そうですとも。ただし値段の折り合いがつけばの話ですが」

「どうも腑に落ちないのだが……」と地主は続ける。

「わしは以前、おまえの倍の広さの土地を持ち、地代を払う必要さえなかったのに、結局のところ暮らしは成り立たなかった。ところがおまえは、二十年もわしに地代を払いつづけ、しかも土地を買い取るだけの金を貯めこんだという。いったいどうなっているのだ?」

「なあにわけはありませんや。地主様はいつもゴロ寝をして財産を食いつぶしておいでになった。だが、わしは毎日早起きして、野良仕事に打ちこんでいた。ただそれだけの違いですよ」

 - 6章 - 時間の知恵