自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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節約こそ自助の精神の最高表現

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●節約と節制が自分の分別や人格をも形作る

将来に日を向けて生きるには、失業、病気、死という不慮の災厄への備えを怠ってはならない。このうち最初の二つは避けられもするが、死だけは人間の力ではどうにもならない。

だが思慮深い人間なら、突然どんな災難が降りかかろうとも、苦しみをできるだけ緩和できるよう、また自分を頼って暮らす人にも影響が及ばないよう、あらかじめ備えを万全にして生活するだろう。

この点から見ていちばん大切なのは、正直な手段で金を得て、それを倹約しながら使うことである。正直に金を稼ぐとは、誘惑に負けず努力と勤勉で望みを果たすことに他ならない。金を倹約して使うというのは、すぐれた人格者の基礎となる資質――すなわち分別や先見性や克己心を備えている証拠だ。

もちろん、いつでも金が役に立つというわけではない。だが、衣食や生活上の満足はもとより、自尊心や自立心など人間に有意義なものを与えてくれるのは、やはり金の力なのだ。だから、貯蓄は困窮に対する砦である。貯蓄によってわれわれは生活の足場を固められるし、暮らし向きが好転するまで希望を失わず快活に生きていける。

貯蓄によって自分の足場を固めようという努力は、それだけでも十分尊敬に値する。その努力を通じて人は向上し、より強くなる。行動の幅が広がり、明日を生きぬく力が湧いてくる。

常に困窮すれすれの生活にあえいでいるのは、奴隷の身の上とほとんど変わらない。こういう人間は、自分の行動さえ自分では決められず、へたをすれば他人に東縛され、人のいいなりに動かされてしまう。しかも、まともに社会を見すえる勇気がないから、卑屈にならざるを得ない。

こんな憐れな状態を脱し、物心画面で自立しようと望むなら、ひたすら節約を励行するに限る。節約にはずば抜けた勇気もすぐれた美徳もいらない。ちょっとした気がまえと人並みの精神力さえあれば十分だ。節約とはつまるところ、家事万端を秩序正しく管理することである。生活を規則通りにつましく切り盛りして、ムダを省いていけばよいのだ。

キリストは節約の精神を「残りものは拾い集め、少しのムダもないようにせよ」という言葉でいい表わした。全能のキリストでさえ、生活上のささいなことがらを軽視せず、人間には注意深さが必要だという点を教訓としてわれわれに残している。

節約と吝薔とはまるで違う。節約は心のゆとりを生み、それが気前のよさとなって現われる。この意味で「節約は思慮分別の娘であり、節制の姉、そして自由の母である」といえるだろう。要するに節約とは、自助の精神の最高の表現に他ならない。

 - 7章 - 金の知恵