自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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ウェリントンを大将軍たらしめた「実務能力」③

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●弱卒を勇者に変える非凡な指導力

事態はウェリントンの予想通りに運び、彼の軍隊はフランス軍に大勝利を収める。

しかしながら一方で彼は、この戦争期間中さまざまな妨害や反対にも悩まされていた。それは、彼が救おうとしたスペイン人やポルトガル人のわがままや臆病や虚栄心のためだけではない。イギリス政府自体がこの戦争では無能ぶりを露呈し、政府内には虚偽や陰謀が飛びかう始末であった。こんな状況にありながら彼が戦いを遂行できたのは、失意の最中にも自己を信頼し、断固自分の意志を貫き通せたからである。

彼はナポレオン配下の兵隊と戦うだけでなく、スペインやポルトガルの政府をも押さえつけなくてはならなかった。軍の食糧や衣服の確保も非常に困難だった。タラベラの戦いの最中には、スペインの敗走兵が友軍のイギリス兵を襲って物資を略奪するという信じがたい事態まで起きている。だがウェリントンは、こうした悩みに耐えぬくだけのがまん強さと自制心を持っていた。そして、恩知らずな行動や裏切りや反対に直面しながらも敢然と自らの道を歩みつづけた。

彼はまた、軍隊内の細かな実務まで一手に引き受けた。イギリスからの食糧調達の見こみがなく、すべては自分の才覚一つにかかっているとわかると、たちまち将軍から穀物商人に変身した。そしてリスボンのイギリス大使とはかって食糧の確保に成功している。また、約束手形を発行しては地中海や南米の港で穀物を買いあさった。こうして貯蔵庫を一杯にした後、余った分はポルトガル商人に売却したのである。

ウェリントンは、ものごとを運にまかせず、不慮の事態にも備えを怠らなかった。このすぐれた実務能力は、あらゆる場面で効果を発揮し、彼を成功に導いていった。「自分の軍隊はどこに出しても恥ずかしくない」と彼は断言しているが、経験に乏しい召集兵たちがヨーロッパ最強の軍隊に変わったのも、このような彼の非凡な統率力のおかげであることはまちがいない。

 - 6章 - 時間の知恵