自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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人生の大転機となった″一枚の絵″

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●行動こそが成功への道

地位や身分がどれほど低くても、言葉だけでなく実際に行動を起こし、誠実かつ精力的に努力する人間の方が、大きな業績を成し遂げられるものなのだ。

ポーツマスの靴職人ジョン・パウンズは、困窮家庭の子供に教育と給食を与える学校の設置運動に大きな影響を与えたが、彼はその種の学校の必要性を口先で説いたのではない。むしろ黙々と、行動によって自分の信念を貫こうとした。彼には無言の実践しか念頭になかったのである。

●ガスリーを感化したジョン・バウンズという男

この学校設置運動推進の立て役者ガスリーは、ジョン・パウンズという手本からどのような感化を受けたかを次のように語っている。

「私は、一枚の絵がきっかけでこの学校に関心を持つようになった。数年前ある町を訪れ、休憩しようと宿屋に立ち寄ったところ、部屋の暖炉の上に立派な版画が飾られていた。絵には、靴職人の部屋が描かれている。職人は鼻先にメガネを引っかけ、両膝に一足の古靴をはさんで忙しそうに仕事をしている。その周りではボロをまとった少年少女が立ったまま勉強していて、職人は太いまゆ毛の下から慈愛に満ちたまなざしを子供たちに投げかけている……。

私は好奇心をそそられ、その絵の説明書きを読んだ。それによると、絵のモデルはポーツマスの靴職人ジョン・パウンズ。大勢の貧しい家庭の子弟が、牧師や知事、紳士淑女から見捨てられて街をさまよっているのを憐れんだ彼は、善良な羊飼いさながらに子供たちを集め、教育をほどこしている。しかも、額に汗して得たわずかな収入で生計を立てながら、これまでに五〇〇人以上の子供を不幸から救い出したというのだ。

私は自分自身を恥じた。″いったい私はこれまで何をやってきたのか″という自責の念で胸が詰まった。この時から、私はジョン・パウンズの経歴について調べはじめた。港町ポーツマスの岸壁のあたりでは、ボロをまとった子供を追い回し自分の家に引っ張っていこうとするパウンズの姿が、よく見られたものだ。とはいっても、警官のように力ずくではない。子供たちのジャガイモ好きをよく知っている彼は、自分もボロボロの服を着こみ、ゆでたてのジャガイモを子供の目の前にぶらさげて走るのだ。

ともあれ、名誉に値する人がしかるべく尊敬されるような日がきたら、彼が真っ先にその光栄に浴するのはまちがいないだろう。彼の絵を初めて見たとき、私は彼こそ人類の誇りだと感じたが、その思いはいまも変わらない」

 - 9章 - 素晴らしい出会い - 人生の師・人生の友・人生の書