自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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価値があるのはお金ではなく、それを使って幸せな人生を送れるかどうかだ

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●金に対する誤った「愛情」

世間には、財を貯めこむことだけを生きがいにして金もうけに奔走する人間もいる。確かに、身も心も金もうけに捧げつくせば、十中八九金持ちにはなれるだろう。頭を使う必要などほとんどない。稼ぎより支出を少なくしてケチケチ貯えていけば、やがて黄金の山も築けるというわけだ。

だが、ジョン・フォスターはこんな話をしている。

ある若者が放蕩で身を持ち崩し、親譲りの財産を使い果たしてしまった。万策つきた彼は、自殺を決意して家を飛び出し、近くの高台に登る。そこからはかつて彼の所有していた地所が見渡せた。

彼は腰を下ろしてしばらくもの思いにふけっていたが、やおら立ち上がった。あの土地を再び取り返そうと決意したのだ。町へ戻った彼は、石炭運びの仕事を始め、わずかずつではあるが金を貯めこんだ。しだいに貯えが増えると、今度は牛の売買に手を出し、後にはもっと大きな取引を始めた。そしてついに彼は、かつての地所を取り返してもまだ余りあるほどの大金持ちになったのである。

しかしながら、彼はとほうもない守銭奴の一生を送った。やがて彼は死に、埋葬されたが、それは土くれが土に戻っただけのことだ。これだけの決意のできる人間なのだから、もっと高邁な精神さえあれば自分のためだけでなく人のためにもつくせたにちがいない。だが彼は、結局のところみじめな一生を送り、みじめに死んでいったのである。

富だけを目当てに金を貯めこむのは、心の狭いシミったれた連中のやることだ。賢明な人間は、こんな悪習に深入りしないよう十分注意すべきだろう。さもないと、節約という若き日の美徳は、年をとるにつれて貪欲という悪徳に変わってしまう。

悪いのは金そのものではない。金に対するまちがった「愛情」こそが諸悪の根元なのだ。このまちがった愛情は、心を狭め萎縮させる。そして、寛大な生活や高潔な行ないに対して精神を閉ざす原因となる。

ウォルター・スコットは、自分の小説の登場人物の一人に、こう断言させている。

ペニー銅貨は、抜き身の剣が人を殺すよりもっと多くの魂を殺すのだ

ビジネスにつきものの欠点は、それが人間の性格を機械のように一つ型にはめてしまいがちなことである。ビジネスマンの多くは、お決まりのやり方にへばりつき、その先を見通そうとはしない。このように自分だけのために生きているビジネスマンは、他人をも自分の日的に奉仕するだけの存在だと思いこむようになるだろう。こんな人間の人生は、彼が記入している帳簿の紙っぺら一枚ほどの値打ちすらないにちがいない。

 - 7章 - 金の知恵