自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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苦難を乗り越える力

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●貧苦は決して不幸ではない:

いつの時代もわれわれの社会は、貧困から身を起こした人々から大きな恩恵を受けてきた。その点を考えれば、人間の最高の教育には富や安定が不可欠だなどという説がまちがっていることは一目瞭然だ。

安楽で贅沢三昧の生活は、苦難を乗り越える力を与えてはくれない。むしろ、このようなハリのない生活にひたっていれば、活力に満ちた実り多い人生を送ろうという意欲さえ失ってしまうだろう。

この意味で、貧苦は決して不幸ではない。強い自助の精神さえあれば、貧しさはかえって人間にとっての恵みに変わる。

貧苦は人間を立ち上がらせ、社会との戦いに駆り立てる。社会には、安楽を得ようとした結果、自分を堕落させる者もいる。だが、真摯で誠実な心を失わない人間は、勇気と自信を得て大きな勝利を収めるにちがいない。

哲学者フランシス・ベーコンは次のように語っている。

「人は、自らの富も自らの能力も正しく理解していない。富については必要以上にすばらしいものだと信じる反面、人間の能力はさほど偉大なものだと思っていない。自らの富を否定し、自らの力のみを信頼できる人間だけが、自分の水桶から水を飲み、自分のパンを食べる方法を学ぶ。つまり、生計を立てる道を習い、自分が善だと思うことを他人にも実践していけるようになるのだ」

富は、安逸で勝手気ままな生活へと人間を強く誘惑する。しかもわれわれ人間は、生まれつきこのような誘惑にはめっぽう弱い。そのため、豊かで恵まれた家庭に育ちながら、なおもその時代に重要な役割を演じることのできた人間、つまり快楽に満ちた生活を軽蔑し、毎日を勤勉に生きた人間こそいっそう尊敬に値するといえよう。

半島戦争(一八〇八~一八一三。ナポレオンの侵略に対するスペイン人の抵抗戦争。イギリスはスペインを援助した)の際に、あり余るほどの年収があるイギリス人が、下士官として連隊と共にぬかるみの中を行軍したという話は、美談として現在まで語り継がれている。このように地位が高く財産のある人間でも、国家のためにさまざまな分野で、その多くは自らの命をなげうってでも勇敢に戦い、立派にその任務を果たしている。哲学や科学においても、先のベーコンのように上流階級に生まれながら名声を得た人は多い。

 - 1章 - 自助の精神