自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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頭脳と心・体の効率のよい鍛えかた

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●″自学自習″で勝ち取った知識は応用がきく

最良の教育とは、人が自分自身に与える教育である

ウォルター・スコットはこう語ったが、学問や芸術の分野で偉業を成した人間には、確かにこの言葉が当てはまる。

学校教育は、真の教育のほんの手始めにすぎず、精神を鍛え勉強の習慣をつけるという意味でのみ価値がある。他人から押しつけられた教育は、自分で熱心に努力して得たものほど身につかない。自らの汗と涙で勝ち取った知識だけが、完全に自分の所有物となるのだ。

自分自身が勉強すれば、その内容についての印象はいつまでも鮮明に残る。人から与えられた不十分な情報とは違って脳裏にはっきりと刻みこまれる。このような自己修養は、同時に学問への情熱を呼び起こし、それを強める。一つの問題を解けば、それが次の問題を征服する励みとなり、知識はしだいに実際の用を足すものに変わる。

要するに、能動的に学ぶ姿勢が肝心だ。いかにすぐれた書物や教師にめぐりあおうと、丸暗記の授業をどれだけ続けようと、このような自己修養の姿勢が不要になることはない。

いつの時代も、最良の教師たちは自己修養の重要性を真っ先に認め、自力で知識を修得するよう学生を励ましてきた。「授業」よりも「訓練」に重きを置き、学生が自ら進んでその学問に打ちこめるようしむけた。このような方法は、知識のわずかな断片を一方的にたたきこむ授業では及びもつかないほどの効果を上げる。

著名な教育家アーノルドのやり方も、この精神にのっとっている。彼は学生に、人を頼らず自分の努力によって力を伸ばすべきだと説いた。彼自身は、ただ学生を指導し励まし、勇気づけるだけだった。彼は語る。

「子供は南洋の小島にでも送って、そこでパンを得るために働かせたほうがよっぽどましだ。オックスフォード大学に入ったはいいが、贅沢な生活に染まり、自分の恵まれた条件を生かそうとする気持ちすら失うくらいなら――」

別の機会に彼はこうも述べている。

「この世には、ほんとうに驚嘆すべきことが一つある。それは、生まれつき才能には恵まれていない子供がコツコツと熱心に努力を続けて、真の素養を身につけていくのを見ることだ。そういう子供に、私は脱帽せざるを得ない」

アーノルドはある時、理解の遅い少年を教えていて、きびしく叱りつけたことがある。するとその生徒は、彼の顔をまじまじと見つめてこういった。

「先生、どうして怒ったりするのですか? 僕が本当に精一杯努力しているというのに……」

数年後、彼はこの話を自分の息子に聞かせ、こう付け加えたという。

「生涯で、あれほど胸にこたえたできごとはなかった。少年のまなざしとその言葉は、いまでも忘れられないほどだ」

 - 8章 - 自己修養