自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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常に「進歩する人」のメモと時間の使い方

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●「時間とは消滅するものなり。かくしてその罪はわれらにあり」

オックスフォードのオール・ソウルズ・カレッジの日時計に刻まれたこの厳粛な言葉ほど、若い人々への訓戒の辞にふさわしいものはない。

永遠なるこの世の真理の中で、わずかに時間だけは我々の自由裁量にまかされている。そして人生と同じように時間も、ひとたび過ぎてしまえば二度と呼び戻せはしない。

 

エクセター大聖堂のジャクソン司教はこう語っている。

「世俗の富なら、過去に放蕩の限りをつくしても将来倹約に励めば、それでつりあいがとれるかもしれない。だが“今日浪費した時間は、明日の時間を借りて埋め合わせよう”などと誰がいえようか?」

時間は貴重な財産である。過去の偉人はみな、時間を有効に使って豊かな思想や功績を生み出し、その宝を後進のわれわれに譲り渡してきた。

成功を得るまでの気が遠くなるような歳月を耐え抜き、努力しつづけた人間の例も少なくない。ニュートンは『自叙伝』の稿を九度改めたという。

ヒュームは『英国史』の執筆中、一日十三時間も机に向かっていた。またモンテスキューは、自らの著作について友人にこう語った。

「君はその本を二、三時間もあれば読破するかもしれない。だが、それを書き進めるときの私の苦労ときたら、頭髪が白く変わるほど大変なものだったからだ」

心に浮かんだ考えや見聞きした事実は、必ず書きとめておく習慣をつけるべきだ。そのほうが強く印象に残り、必要なことを忘れずにすむ。

ベーコンは数多くの草稿を残して死んだが、それには「執筆用に書き留めた断想」というタイトルがつけられている。

パイ・スミスは、若いころ父親のもとで製本業の見習いをしていたが、当時から自分の読んだ本は抜粋して写し、自らの批評も書き留めるという習慣を養った。彼は、生涯を通じて資料収集に熱心に取り組んだが、「常に学び、常に進歩し、常に知識を蓄積している」と伝記作者にいわしめるほどの努力家であった。

こうして書き留めたメモ帳が、書物を著す際に古今の事例の無尽蔵の宝庫となったのはいうまでもない。

名医ジョン・ハンターも、記憶力の弱さをメモで補っていたし、折にふれてメモの効用を説いていた。彼はこう語っている。

「考えたことや見聞きしたことを書き留めるのは、商人が棚卸しをするのと同じだ。それをしないと、自分の店に何が置かれていて何が足りないのか、さっぱりわからないじゃないか」

 - 3章 - 人生の転機を生かす力