自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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これが偉人と取るに足りない人間の差 〜バクストンの物語②〜

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●旺盛な活力と不屈の決意さえあれば、この世に不可能なことは一つもない

わずか三十二歳で下院議員に選出されたバクストンは、イギリス植民地における奴隷の完全解放に取り組みはじめた。彼が奴隷解放運動に早くから興味を示したのは、プリシーラ・ガーニーという女性の影響である。プリシーラは聡明で暖かい心を持った美徳にあふれる女性だった。

一八二一年、死の床に伏していた彼女は、バクストンを幾度も呼び寄せては「奴隷解放の仕事をあなたの人生の目標にしてほしい」と切望した。臨終の際にも、もう一度そのことを伝えようとして果たせず、そのままこと切れてしまったという。

バクストンは彼女の言葉を忘れることはなかった。そして自分の娘の一人を彼女にちなんでプリシーラと名づけた。その娘プリシーラが結婚した一八三四年八月一日は、イギリスにおける奴隷解放の日でもある。その日、娘が子としての務めから解放され、夫と共に自分の家を出て行くのを見送りながら、バクストンは友人宛ての手紙にこう書いている。

「花嫁はいま嫁いだところだ。万事がすばらしい具合にことが運んだ。いまやイギリスの植民地には一人の奴隷もいない」

バクストンは決して天才ではない。英知ある指導者でも発見家でもない。だが、ひたむきで正直で、決意の固い活力みなぎる男だったことは確かだ。その全人格は、彼の次の言葉の中で十分にいいつくされている。しかもこれは、青年なら誰しも心に刻みこむべき至言である。

「長生きするにつれ、ますます確信を持っていえることがある。強者と弱者の違い、偉人と取るに足りない人間との違いは、その人間が旺盛な活力と不屈の決意を持っているかどうかにかかっている。ひとたび目標が定まったら、あとは勝利か死のいずれかしかない ― そう断じ切る決意が大切なのだ。旺盛な活力と不屈の決意さえあれば、この世に不可能なことは一つもない。逆に、それを備えていなければ、どんなに才能や境遇やチャンスに恵まれていようと、二本足で歩く動物の域を出ず、真の人間にはなれないだろう」

 - 5章 - 意志と活力