自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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“人間の枠”を超えた独立独歩の人

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●自分の力で道を切り開く

かくしてリビングストンは医学課程を修了し、ラテン語の論文を書いて試験にパスし、内科と外科の開業資格を手に入れた。

当初、彼は中国へ渡ろうと考えた。だが、そのころイギリスは中国と戦争をしていたため計画はご破算になってしまう。彼はその後ロンドン伝道教会に奉仕を申し出たが、そこの口ききでアフリカに派遣されることになり、一八四〇年にアフリカへ到着した。

ただ、彼にいわせると、このアフリカ行きには一つだけ苦痛がつきまとっていた。中国行きの計画では、彼は自分の力だけを頼りにしていたが、今回はロンドン伝道教会が費用を負担してくれたからだ。

「独立独歩でやってきた人間がわずかでも他人の恩恵をこうむるというのは、あまり居心地のよいものではありませんね」というのである。

アフリカに着いたリブングストンは猛然と仕事に取りかかった。彼は他人の仕事の後を引き継ぐだけでは満足せず、独自の活動領域を広げ、現地人の住居建設のような仕事にも乗り出した。布教を中心に置いていたのはもちろんだが、この布教活動は「綿工場で働いていたころと同じくらい疲れ、夜の勉強にまでひびいた」と彼は述べている。

その後、ツワナ族(現在のボツワナの民族の一つ)の間で働くようになったリビングストンは、運河を掘って家を建て、野を開墾して家畜を飼い、原住民に労働と信仰を教えた。ある日、彼がツワナ族の人たちと初めての長旅に出ようとすると、聞くともなしにこんな話が耳に入ってきた。それは、彼の外観と体力についてのやりとりだった。

「あの人は丈夫なほうじゃない。第一、体だって痩せている。服を着ているからたくましく見えるが、じきにバテてしまうのがオチさ」

これを聞いて、伝道師の体を流れるスコットランド高地人の血が騒いだのはいうまでもない。彼は旅行中の数日間というもの、ツワナ族がヘトヘトに疲れても容赦なく全速力で歩かせつづけた。そしてしまいには彼らも、リビングストンの耐久力の強さを認めざるを得なかったのである。

晩年のリビングストンには、こんなエピソードも残されている。アフリカに一緒に持っていった蒸気船バーケンヘッド号がとうとうこわれてしまった時、本国へ代わりの船を注文した。およそ二〇〇〇ポンドの金がかかるが、旅行記を出版した印税をそれに充てることにした。だが、実はその金はわが子の財産にと貯えておいたものだったのだ。

船の建造費にその金を回すよう子供たちに指示した手紙の中で、リビングストンはこう書いている。

この出費の穴埋めは、おまえたち自らで成し遂げなければならない

このエピソードには、彼の人となりがいかんなく表わされているといえよう。

 - 5章 - 意志と活力