自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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自分の才能を最大限に生かすヒント

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人間をつくるのは安楽ではなく努力ーー便利さではなくて困難である。もちろん人生の途上に横たわる困難は、成功へのはっきりした手だてが得られて初めて克服できる。しかしながら、失敗がわれわれの最良の経験となるように、こうした困難もわれわれには最良の教師となる。

「私は、順調で華やかな人生を送っている人間より、失敗してもそれにめげず生きている人間に望みをかけている」と、政治家チャールズ・フオックスは語った。そしてこう続ける。

「ある若者がずばぬけた弁舌の才でいっぺんに有名になったという話を聞くと、確かになるほどと思う。だが、そのままさらに向上をめざせばよいが、ひょっとすると最初の成功ですっかりのぼせ上がってしまうかもしれない。むしろ私は、初めはつまずいても、なおかつ努力を続けているような若者に会いたい。賭けてもいいが、そのような若者のほうが最初から順調に歩んでいる人間より大成するはずだ」

われわれは、成功ではなく失敗からむしろ多くの知恵を学ぶ。「何を行なうべきか」に気づくのは、「何を行なってはいけないか」を悟る時だ。過ちを犯さなければ、いつまでたってもそこに気づくことはない。

たとえば、昔から大勢の人が、水面から10メートル以上の高さにポンプで水を汲み上げようと試みて失敗した。だが、その失敗がきっかけとなって気圧の法則は発見され、ガリレオやトリチェリやボイルのような科学者の研究にも新生面が開かれた。また名医ジョン・ハンターは「医者が、自分の成功例だけでなく失敗例をも公表する勇気を持たなければ、医学は前進しない」といつも語っていた。

発明家ワットも、「機械技術の分野にいちばん必要なのは挫折の歴史である。私はヘマな失敗例を集めた書物がほしい」と述べている。化学者ハンフリー・デイビーは、ある実験が手際よく進められるのを見た時、「自分は手先が器用でなくてよかった。私の重要な発見はことごとく失敗がヒントになっているのだから」と語ったという。さらに、ある高名な物理学者はこう書き残している。

「研究中、一見克服できそうにない障害につき当たったとすれば、それは何かを発見する寸前のところまで到達している証だ」

偉大な思想や発見、発明はこうした苦しみの中ではぐくまれ、悲しみの中で熟考され、困難を経てようやく成し遂げられてきた。ベートーベンはロッシーニを評して「音楽の天分はあるが、子供のころ甘やかされて育ったために才能が台なしにされている」と述べた。警戒すべきは、必要以上の称賛や好意的すぎる批評にのぼせ上がってしまうことだ。それに比べれば、手きびしい辛辣な評価のほうがむしろ本人のためになる。メンデルスゾーンはオラトリオ「エリヤ」の初演に際して、友人の批評家に笑いながらこう語ったそうである。

「存分にアラを探してこき下ろしてくれたまえ。どこが気に入ったかなんて話は聞きたくない。気に入らないところだけを教えてほしいのだ

 - 8章 - 自己修養