自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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人生の秘訣の九割は快活な精神と勤勉にある

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●習うより慣れろ

最大限の努力を払ってでも勤勉の習慣を身につけなければならない。それさえできれば、何ごとにおいても進歩や上達は目に見えて速くなるだろう。

また「習うより慣れろ」の言葉通り、同じことを何度も反復練習する必要がある。

それなしには、たとえばどれほど簡単な技術であろうと、ものにはできない。逆に、くりかえし訓練を積めば、どんなに困難な目標でも必ず達成できる。

政治家として名高かったロバート・ピールは、非凡な才能こそ持ち合わせていなかったが、小さいころのしつけと反復練習のおかげで栄光の地位を勝ち得た。

少年時代、父親はいつもピールを机の前に立たせて即興のスピーチをさせていた。ピール自身も安息日の説法をくりかえし唱えて暗記するのを日課としていた。

初めはさしたる進歩も見られなかったが、こつこつと訓練を続けるうちに集中力が高まり、ついには説法の一字一句まちがえず復唱できるまでに進歩した。

後に彼は、比類なき弁舌の力で政敵を圧倒していったが、その人並みはずれた正確な記憶力が幼年時代に父親のもとで受けた訓練の成果であるのは疑う余地がない。

●努力でクマも踊り出す

音楽やバレーの分野でも同じことがいえる。

たとえばバイオリン一つをとっても、ひきこなすには長年にわたる血のにじむような練習が必要である。名バイオリニスト、ジアルディーニは、すぐれたテクニックを身につけるまで二十年の間、一日十二時間の練習を欠かさなかったという。

また、「努力でクマも踊り出す」といういいまわしがフランスにあるが、同じことで端役ダンサーが洗練された身のこなしを体得して脚光を浴びるまでにはほとんど報われないようなつらい努力を何年も続けなくてはいけない。

バレリーナとして名高いタリオーニは、舞台当日にも父親から猛レッスンを受けていた。そして疲労のあまり昏倒し、意識不明のまま手当てを受けたことが幾度もあったという。観客を魅了する彼女の踊りは、このような代償の上に花開いたものである。

人間の進歩の速度は実にゆっくりしている。偉大な成果は、決して一瞬のうちに得られるものではない。そのため、一歩ずつでも着実に人生を歩んでいくことができれば、それを本望と思わなければならない。

「いかにして待つかを知ること、これこそ成功の最大の要諦である」と、フランスの哲学者メストルも語っている。

作物を刈り取るには、まず種をまかなければならない。その後は、収穫の時期がくるのを忍耐強く待ちつづける必要がある。そして多くの場合、いちばん待ち望まれる果実ほど実を結ぶのはいちばん遅い。だから、一刻も早く成果を得ようなどとあせってはダメだ。東洋のことわざにあるように「時間と忍耐は桑の葉をシュス(サテン)に変える」ものなのだ。

根気強く待つ間も、快活さを失ってはならない。快活な精神はすぐれた資質であり、それはどんな不幸や失望にもへこたれない力を与えてくれる。

ある主教は「キリスト教の奥義の九割は中庸にある」と述べたが、その言葉にならえば、「人生の奥義の九割は快活な精神と勤勉にある」といえるだろう。快活さを失わず努力することは、成功と幸福への土台となる。明朗快活な気持ちで実直に仕事をこなしていくのは、おそらく人生の無上の喜びであろう。自信や活力もおのずとそこから生まれてくる。

シドニー・スミスという司祭は、ヨークシャー州にある片田舎の教区へ派遣されたが、彼はこの左遷同様の措置にも不平一つ漏らさず、むしろ進んでそこでの仕事に全力をつくそうと決意した。

どんな仕事でも、それを好きになるよう心がけて自分自身を慣らしていこう。そのほうが、現在の境遇に不満をぶつけたり自分にはもっと力があるなどと不遜な考えを持つより、よほど人間らしいではないか

彼はこう語っている。

 - 2章 - 忍耐 努力が苦でなくなる法