自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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空高く飛ぼうとしない精神はやがて地に落ちる

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●人格こそが人間の根本を形成する

「知は力なり」といわれる。だがもっと深遠な意味でいえば、人格こそが力なのである。愛情なき心、行動を伴わぬ知性、やさしさに欠けた才気――これらも確かに力ではあるが、ヘタをすると害悪をもたらすだけのものになりかねない。

われわれは確かに、このような知性からも何かを学びとり、楽しみを与えられるだろう。だが、それを尊敬できるかといわれればなかなか難しい。ちょうど、器用に人のふところから財布を抜き取るスリや、馬をみごとに操る追いはぎを尊敬しかねるのと話は同じである。

誠実や高潔、善意という資質は、単なる言葉のアヤでは語りつくせない。そして、これらの資質こそが人間の人格の根本を形づくっていく。この資質に意志の強さが加われば、それこそ鬼に金棒だ。善を行ない悪を拒み、困難や不幸に耐えぬく力は、たちどころにわれわれの体内にみなぎるにちがいない。

ある武人が、卑劣な暗殺者に捕えられた。暗殺者はこの武人をあざけり、「もはやおまえには、身を守る砦すらないのさ」とせせら笑った。すると武人は自分の胸に手を当て、「私の砦はいつもここにある」と答えたという。このように、いかなる不運に見舞われようとも、高潔な人間の人格はまばゆいばかりの光彩を放つ。たとえ万人が倒れた後も、彼は高潔さと勇気を武器に一人孤塁を守っていくだろう。

アースキンは、不羈独立の精神と真理へのあくなき探求心をかね備えた実に立派な人物だった。彼は、自分の行動の信条を次のように述べているが、それは万人が心に刻むべき言葉である。

常に良心が命じる義務を果たし、結果は天にまかせよ――これが幼少のころ両親から受けた教えだ。私はいまもこの忠告を実践しているし、決してそれを忘れずに一生を終えるだろう。この教えを守って生きてきた私には、それだけ犠牲も多かった。だが、少しも悔やんではいない。むしろそのような人生こそ、結局は繁栄と幸福への道だったのだ。私は自分の子供にも、ぜひ同じ道を歩むよう教え示すつもりでいる」

人は誰でも、すぐれた人格を得ることを人生最大の目的とすべきである。正しい手段でそれを得ようと努力すれば、ますます生きる力がみなぎり、人生観もゆるぎないものとなるだろう。

たとえ実現はできないとしても、人生に高い日標を持つことは少しもムダではない。

顔を高く上げようとしない若者は、いつしか足もとばかり眺めて生きるようになるだろう。空高く飛ぼうとしない精神は、地べたをはいつくばる運命をたどるだろう」と、政治家ディズレーリは述べている。

生活と思考に高い規準を設けて暮らす人間は、確実に進歩向上する。最高の成果を求めようと努力すれば、誰でも最初の出発点よりはるかに前進できるはずだ。しかも究極の目標地点には達しなくとも、向上の努力は必ずそれにふさわしい恩恵をもたらすにちがいない。

世間には、人格者ぶった偽善のやからも多い。もちろん、真にすぐれた人格はめったに見まちがわれたりしない。だが中には、立派な人格が金もうけの役に立つと考える連中もいる。彼らは、ことさら人格者ぶって軽はずみな人々をたぶらかそうとする。

チャタリス大佐は、正直なことで有名な一人の男に「君のような評判が得られるなら、一〇〇〇ポンド払ってもいいね」ともちかけた。「なぜですか?」とたずねられると、このならず者の大佐は「それを元手にすれば、軽く一万ポンドだって稼げるからさ」と臆面もなく答えたという。

 - 10章 - 信頼される人 - 人格は一生通用する最高の宝だ!