自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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上品さは金にも勝る価値

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●「品性の生みの親」は何か

最もよい意味での「上品さ」は、すぐれた資質である。品性の高い人間は尊敬に値し、ふりかえって見るだけの魅力を持っている。

しかしながら、単に世間体だけを取りつくろっているような上品さには、一顧の価値すらない。富める悪人より優秀で立派なのは貧しい善人だ。

豪華な家に住み、馬車を自由に乗り回し、愛想をふりまいているゴロツキに比べれば、黙々とつつましく生活している人間のほうがどれほどましなことか。身分がどうであれ、沈着冷静な心と深い知識を身につけ、世の中の役に立とうと努めるほうが、月並みな上品さよりはるかに重要な意味を持っている。

人生の最高の目的は、人格を強く鍛えあげ、可能な限り心身を発展向上させていくことである。これこそ唯一の目標であり、それ以外のものはこのための手段にすぎない。最高の快楽や富、権力、地位、栄誉や名声を得たとしても、それは人生における最大の成功ではない。むしろ、最高の人間性を獲得し、他人の役に立つ仕事に打ちこみ、人間としての義務を果たしていくことこそ、いちばん立派な生き方なのだ。

金は、確かにそれなりの力を持っている。しかし知性や公共心やモラルもまた力であり、むしろ金よりも高貴なものなのだ。コリンウッドは、友人への手紙の一節にこう書いている。

「金などなくても私は豊かになれる。あらゆる不幸や貧困を乗り越えようと努力してさえいれば、私はそれで十分なのだ」

一財産を築き上げた人なら、いわゆる上流社交界に入るのはさほど難しくはない。だが社交界で重んじられるには、それにふさわしい才能やマナーや知力を備えていなくてはならない。さもなければ、単に金をたくさん持ったでくの坊だと見なされてしまう。

しかしながら現在の上流社交界には、そんな大切な資質など少しも気にかけず、したがって、周囲の尊敬も得られないような大金持ちが大勢いる。それはなぜだろうか?彼らは単なる生きた財布にすぎず、彼らの力は金庫の中にしか宿っていないからだ。

社会にほんとうに影響力を持つ人間――世論の先導役となり、真の成功を得て世に貢献する人間は、必ずしも金持ちとは限らない。むしろ高い道徳を身につけ、きびしい経験を積んできた立派な人格者こそが、社会では重んじられるのだ。

どんなに貧しく、ほとんど財産などない人間でも、品性をみがきチャンスを誤らずに利用すれば、資力や能力の許す限り最高の人生を歩んでいける。そしてこのような人間から見れば、世俗的な成功にへばりついている金の亡者など、うらやましいどころか実に哀れで軽蔑すべき連中と映ることだろう。

 - 7章 - 金の知恵