自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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不自由と逆境を脱する四つの美徳

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勤勉、倹約、節制そして誠実という美徳

その日暮らしの生活に追われている人間は、いつになっても下積みの苦しさから抜け出せない。よるべない無力な生活は果てなく続き、やがて社会の隅に追いやられ、時代の荒波に翻弄される。自尊心などなくしてしまうから、周囲の尊敬も得られない。不景気に見舞われるとたちまち窮地に陥る。

多少なりとも貯えがあればやる気も起きるだろうが、それさえないので他人のいいなりに動かされてしまう。

まともな神経を持ち合わせている人間がこんな生活をしようものなら、妻子の行く末を案じてたちまち恐怖におののくことだろう。

かつて政治家コブデンは、ハダーズフィールドの労働者を前にこう語った。

古来、世の中には二通りの人種がいる。金を貯める人間と金を使う人間――すなわち倹約家と浪費家だ。倹約家は家や工場や橋を建設し、さらに多くの偉大な仕事を成し遂げ、われわれに文明や幸福をもたらした。一方、自分たちの資産をムダに浪費してきた人間は、常に倹約家の奴隷だった。いつの時代もそれが自然の道理であり神の定めなのだ。もしも私が、″将来をまるで考えず、ブラブラその日暮らしを続けていても成功できる″などと約束したら、とんだ詐欺師の汚名を着せられてしまうだろう」

やはり政治家ジョン・ブライトも、一八四七年にロッジデールの勤労者集会で同じような忠告を与えている。

「いまの生活が快適ならそれを維持し、あまりよくなければ改善していくべきだが、それには確実な方法が一つだけある。勤勉、倹約、節制そして誠実という美徳を実践することだ。不自由に縛られた不満だらけの生活から抜け出すには、この四つの美徳を実行する以外に近道はない。しかも多くの人間が、実際にそうやって暮らしを向上させ成功をつかんでいるのだ」

平均的な勤労者の中にも、倹約に努め、高い志を持ち、学識にあふれ、余裕ある生活を送っている者は多い。彼らはそのことだけでも尊敬に値する幸せな人たちで、社会にも十分貢献しているといえるだろう。そして誰でも、そのような暮らしをしようと思えばできるのだ。彼らと同じやり方をすれば結果もまた同じになるはずで、それはさほど難しいことではない。

毎日の労働で日々の生計を立てている人間は、どんな国にもいる。彼らが節約をせず、無知と不幸にさいなまれ、そんな自分たちの境遇に不満ばかりをつのらせているとしたら、それは、彼ら自身の弱さとわがままと強情のせいである。

働く人たちの間に自助の精神が根を下ろせば、たちまち彼らは高い知性と美徳に満ちた生活へと引き上げられていくにちがいない。

モンテーニュは語る。

「あらゆるモラルは、すぐれた人の生活のみならず、名も知れぬ一般庶民の生活にも当てはまる。人は誰でも、自らの中に人間として生きるための条件を完全に備えているのだ

 - 7章 - 金の知恵