自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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好機は二度ない – 人生の転機を生かす力

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●勤勉の中に「ひらめき」が生まれる

偶然のなりゆきで偉大な業績が生まれるためしはめったにない。もちろん、時には向こう見ずな試みがまぐれ当たりとなって成功に結びつく場合もあろう。だが、やはり勤勉と着実な努力こそが成功に至るただ一つの安全な道なのだ。

風景画家ウィルソンが、ある絵の制作に取り組んでいたときの話だ。ウィルソンは、実にありふれた手法を用いて絵を描き進め、ほぼ完成というところまでこぎつけた。ところが彼は、筆を手にしたまま後ずさりしてカンバスをじっと見つめている。そして突然つかつかと絵のほうに歩みよるや、大胆なタッチで二、三ヵ所に筆を入れた。この最後の加筆で、絵はすばらしい出来栄えに仕上がったという。

ただし、これは誰にでもできる芸当ではない。日ごろの努力の積み重ねがあったからこそ、一枚の絵に芸術的生命を吹きこむような加筆が可能だったのである。これが修練の足りない画家であれば、傑作を完成させるどころか、かえってカンバスを絵の具のしみで台なしにしてしまうのが関の山だ。

真にすぐれた仕事をする人間は、絶えずものごとに熱中し、骨身を惜しまず努力を続けている。

偉人は、日々の身辺雑事を決しておろそかにせず、むしろ取るに足りないような問題でもそれを改善しようと力をつくす。

あるとき、ミケランジェロのアトリエに友人が訪ねてきた。ミケランジェロは彫像の一つを指さしながら、友人が以前に訪問して以来どの部分に手を入れたかをこと細かに説明しはじめた。

「ここのところは手直ししました。あの部分もみがきこんだのです。この線は前より柔らかくして、そっちの筋肉も浮き立たせるように工夫しました。唇にもいくぶんか表情を与え、手足にはさらに力感を添えたのです」

「そういうこまごました問題は、私にはさほど重要とは思えませんが・・・・・」と友人が首をかしげると、ミケランジェロはこう答えた。

「確かに、細かい修正など取るに足りない問題かもしれません。しかし、そのようなことが積み重なって美は完成します。つまり美の完成にとっては、どんなにささいな問題でも重要な意味を持つのです」

フランスの画家ニコラ・プーサンも、「やりがいのある仕事なら、それが何であれ最後まで立派に成し遂げるべきだ」ということをモットーにしていた。後年、画家として名声を博した理由を友人からたずねられたとき、彼は「どんなささいな問題でもなおざりにしなかったからでしょう」と答えたという。

 - 3章 - 人生の転機を生かす力