自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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不作法は人柄のよさまで帳消しにする

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●最低限のマナーを守れば、こちらの気持ちもいっそう強く相手に伝わる

マナーは、行動を引き立たせる装身具のようなものだ。

親身な言葉をかけたり思いやりを行動で表わしたりするには、それにふさわしい方法がある。こうした場合のマナーを守れば、こちらの気持ちもいっそう強く相手に伝わる。

逆に、いくら親切心があるにせよ、気乗りのしない態度や恩着せがましいそぶりを見せると、相手はそれを好意とは受け取らないだろう。

ところが現実には、無愛想をむしろ誇りにさえ思っている人間がいる。どんなに美徳や能力を持ち合わせていても、そんな態度を露骨に示せば世間からはつまはじきにされる。平気で人の自尊心を傷つけ、不愉快な話を得意顔で吹聴するような鼻つまみ者など、誰だって好きになれるわけがない。

その一方で、ふだんはやけに他人にペコペコしながら、ちょっとした機会をとらえては自分の偉さを見せつけようとする連中も多い。

名医アバネシーが聖バーソロミュー病院に就職しようと運動していた時に出くわした男も、このたぐいの人間だった。それは金持ちの食料雑貨商で、病院の理事にも名を連ねていた。彼は、推薦状をもらいにわざわざ自分の店まで出向いてきたアバネシーを前に、いかにも大人物をきどってこういった。

「ご推察いたしますところ、先生は人生の重大な転機にあたって、この私の推薦を求めにいらしたのですな?」

かねてからこの大ボラ吹きを嫌っていたアバネシーは、尊大な口のきき方をよほど腹にすえかねたのか、すぐさまこうやり返した。

「推薦だって?冗談じゃない。私はただイチジクを買いにきたんだ。1ペニー分だけさっさと包んでくれ。すぐ出かけなきゃいけないんだから!」

礼儀作法も、度が過ぎるとキザっぽい悪ふざけに映る。だが適切なマナーの習得は、ビジネスで人と交渉する機会の多い人間には不可欠の条件だ。とくに、高い地位にあり交際範囲も広い人にとっては、愛想のよさと立派なマナーが成功のカギを握っているといえよう。いくら勤勉で誠実を絵に描いたような人間であっても、行儀作法が落第点なら人柄のよさまで帳消しにされてしまう。

むろん、マナーの善し悪しなど気にかけず、むしろその奥に隠されたほんとうの人柄に目を向けようとする奇特な人も中にはいる。だが、多くの人はそれほど寛大ではない。外面に表われるふるまいを見てその人間を判断し好き嫌いを決める、というのが世間一般の常識なのだ。

 

 - 10章 - 信頼される人 - 人格は一生通用する最高の宝だ!