自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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精神に「弾力性」を与える読書を

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●漫画やゲームはあくまで娯楽、のめり込みすぎないように

学問を単なる知的な気晴らしや娯楽の手段に利用すると、教育自体の変節を招きかねない。だが現在では、教育の身売りのお先棒をかつぐ連中が大勢いる。また、手を変え品を変えた軽薄な通俗文学が人の心をみだりに刺激し、世間もそれをもてはやしている。

このような大衆の好みに迎合するため、書物や雑誌にはどぎつい表現が盛りこまれ、おもしろおかしい言葉がふんだんに使われ、常識破りの下品な描写がわがもの顔でまかり通っている。かつて劇作家のダグラス・ジェロルドは、この傾向を次のように批判した。

「何ごとにつけても下品なばか笑いをする現代の風潮に、世間はいつか嫌気がさすはずだ。少なくとも私はそう願っている。結局のところ、人生には真剣にならざるを得ない部分がある。人生のすべてが人間のこっけいな歴史ではないのだ」

著述家ジョン・スターリングも同じ趣旨のことを語っている。

成長期にある若者にとって、雑誌や小説は疫病以上に恐ろしい新たな精神の病だ。それはきれいな水を腐らせ、家庭をむしばむ害虫のようなものだ

重労働の気休めや息ぬきに、大作家のすぐれた物語を読むのは、確かに高尚な知的楽しみである。名作と呼ばれる文学は、老若男女を問わずどんな読者をも本能的に強く魅了せずにはおかない。適度な読書の楽しみは決して奪われるべきではない。

しかし、寝食を忘れてまで書物にのめりこむのは考えものだ。くだらない本をむさぼり読み、そこに描かれる常識はずれな人生模様に感激して余暇の大部分を過ごす人間も多い。だがそれは、時間の浪費にとどまらず人間の精神にも有害な影響を与える。

小説に読みふけり、まやかしの感情に支配されると、健全な心はゆがみ、精神の麻痺する危険が大きくなる。本を読んで憐憫の情をもよおしたからといって、それが実際の行動につながるわけではない。本の中の事件に心を動かされたとしても、それは現実の自分が困る問題ではなく、自分が犠牲を強いられることもない。だからフィクションにばかり感動していると、現実に対してしだいに無感覚になってしまう。精神という鋼は徐々に摩耗し、弾力性というかけがえのない特性もいつの間にか失われていく。

バトラー主教はこう語っている。「心の中にいくら美徳の絵を描いても、現実に美徳の習慣が身につくわけではない。むしろ心はコチコチに固まり、しだいに不感症となるだろう

 - 8章 - 自己修養