自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

*

最高の「教育」は日々の生活と仕事の中にある

LINEで送る
Pocket

●最高の「教育」は日々の生活と仕事の中にある:

エネルギッシュに活動する人間は、他人の生活や行動に強い影響を与えずにはおかない。そこにこそ最も実践的な教育の姿がある。学校などは、それに比べれば教育のほんの初歩を教えてくれるにすぎない。生活に即した教育は、むしろはるかに効果が高い。家庭や路上で、店や工場や農家で、そして人の集まるところならどこでも、毎日の生活教育は実践されている。

これが社会の一員となるための教育の仕上げなのである。それを、ドイツの劇作家シラーは「人類の教育」と呼んでいる。

実際の仕事を学びながら人間性をみがき、克己心を養うことができれば、人は正しい規律を身につけ、自らの義務や仕事をうまくこなしていけるようになる。このような教育は書物からは学べず、学校の単純な授業からも得られない。

ベーコンはこう語っている。

「どんな学問や研究も、それ自体をどう使えばいいかについては教えてくれない。その一方、現実生活をよく観察すれば、学問によらずとも学問にまさる知恵を身につけることができる」

このベーコンの言葉には、現実生活の持つ意味が正しく表現されている。しかも、知性を啓発するには何が必要かが的確にとらえられている。

人間は、読書ではなく労働によって自己を完成させる。つまり、人間を向上させるのは文学ではなく生活であり、学問ではなく行動であり、そして伝記ではなくその人の人間性なのである。

そうはいっても、すぐれた人物の伝記には確かに学ぶところが多く、生きていく指針として、また心を奮い立たせる糧(かて)として役立つ。立派な人間性を持った人物は、自助の精神や目的へ邁進(まいしん)する忍耐力、めざす仕事をやり抜こうとする気力、そして終生変わらぬ誠実さを兼ね備えている。

伝記は、このような貴重な人間の生涯をわかりやすい言葉で伝え、われわれが目標を成し遂げるには何が必要かをはっきり示してくれる。また、主人公が恵まれない環境から身を起こして名誉や名声を勝ち得るまでの歩みが生き生きと描かれ、読む者に自尊心や自身の大切さを痛感させる。

哲学の分野にしろ、文学や芸術の分野にしろ、偉人とたたえられる人物はどこか特定の身分や階層に属しているわけではない。大学を出た者もいれば、幼いうちから働いた者もいる。貧しい掘っ立て小屋の出もいれば、金持ちの邸宅に生まれた者もいる。

きわめて貧しい境遇にもかかわらず最高の地位に上りつめた人物の例を見れば、どんなにきびしく克服しがたいような困難でさえ、人間が成功する上での障害とはならないと、はっきりわかる。多くの場合、このような困難は逆に人を助ける。つまり、貧苦に耐えて働こうという意欲も起きるし、困難に直面しなければ眠ったままになっていたかもしれない可能性も呼びさまされるからだ。

このように、障害を乗り越えて勝利を勝ち得た人間の例は多い。それは「一志をもって万事を成し得べし」という格言をみごとに証明している。

 

 - 1章 - 自助の精神