自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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理想に現実を重ね合わせる努力

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理想の自分になれるよう努力する

言行一致は、立派な人格のバックボーンを成している。常に誠実な言動を心がけるのが人格者のすぐれた特質なのだ。

偉大な政治家ロバート・ピールの没後まもなく、ウェリントンは議会で追悼の辞を述べた。故人のすぐれた人柄は、ウェリントンの次の言葉の中にいかんなくいいつくされている。「みなさんは、故ピール氏の尊敬すべき気高い人柄について思いをはせているでありましょう。私も、公的な場で故人と長く職務を共にし、個人的にも親交を得てまいりました。ふりかえってみますと、私はこれまで彼ほど信頼のおける人物、正義感にあふれた誠実な人物に出会ったためしがありません。彼は誰よりも、国民の生活向上に変わらぬ情熱を燃やしておりました。彼と接するたびに、真理に忠実たらんとする姿勢を強く感じました。また、これも私がつぶさに見てきた事実で、そこには一点の疑いの余地すらありませんが、彼は自分にとって正しいと確信できないことは何一つ語ろうとしないほど誠実一途な人だったのです」

言葉上だけでなく行動においても誠実たらんと努力することが、高潔な人格をつくる基本だ。人は外見と内実とを一致させなくてはいけないし、かくありたいと思う理想像に自分自身を実際に重ね合わせていくべきなのである。

奴隷解放運動家グランビル・シャープのところに、あるアメリカ人から便りが届いた。手紙の主は、シャープのすぐれた人柄を慕うあまり、息子の一人に彼の名をつけたという。シャープはさっそく次のような返事を書き送った。

「ご子息に私の名を分け与えたと伺いましたが、それならぜひ私の家に伝わるとっておきの処世訓も教えてあげてください。それは″人からよく見られたいと思ったら、うわべだけでなく中身もよい人間になるよう努力せよ“という言葉です。父から聞いたところによると、祖父もこの格言をけなげに実行したとのことです。祖父はもともと質実剛健な人間でしたが、その努力のかいあって公私共に裏表のない誠実な人柄を身につけたそうです」

自分を大切にし、同時に他人をも尊重する人なら誰でも、「自らの欲するところを忠実に行なえ」というシャープの処世訓を実行できるだろう。そして与えられた仕事には、手抜きをせず全力で打ちこむだろう。

このような誠実さと良心は、人間として誇るべき資質である。逆に、行動と言葉がバラバラな人間は決して尊敬などされないし、彼らが語る言葉には何の重みもない。たとえ、その言葉に多少の真実があったとしても、それさえ舌先三寸のでまかせだと思われてしまう。

真の人格者は、人に見られていようがいまいが正しくふるまうものだ。たとえば、目の前にナシが置かれていて、あたりに人気がなければ、一、二個はくすねてしまう子供がいるかもしれない。だがある少年は、誰もいないところでさえナシを盗んだりはしなかった。その理由を聞かれて、彼はこう答えた。

「いいえ、そこには人がいました。ぼくが自分の目で見ていたんです。ぼくは自分が悪いことをするところなんて見たくはありませんからね」

これは、ささいではあるが良心の大切さを示す適切な例だ。良心とは人格を守る砦であり、人生にも大きな影響を与える。良心を失えば人格は守られるすべもなく、誘惑のえじきとなり呆てるだろう。

誘惑に屈するにつれ、人は卑劣で不誠実な道に迷いこみ、堕落する。仮に誘惑に負けて犯した悪事がうまく運んだとしても、またそれが発覚しなかったとしても、その人間はもはや昔とは別人である。そしてしだいに内心の不安に脅かされ、良心の苛責に打ちのめされていく。これは、罪人なら誰しもがたどる避けがたい運命なのだ。

 - 10章 - 信頼される人 - 人格は一生通用する最高の宝だ!