自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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若き日の偶然が一生を方向づける

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●ちょっとした日常の出来事を無駄にしない

ちょっとした日常のできごとが、研究のきっかけや暗示を与えてくれる場合も多い。もちろん、その当人が機敏にこのような機会をとらえて利用できたら、の話ではあるが・・・・・。

物理学者ファラデーが一本の古ビンを使って電気の実験を初めて試みたのは、彼がまだ製本職人として働いているころだった。一介の職人が科学を志すというのも奇異な話だが、そのきっかけは、ひょんなことからだった。当時、ファラデーは百科事典の製本をまかされていたが、仕事の最中にふと「電気」という項目が目にとまった。興味をそそられたため、その部分を読みふけっていると、そこへたまたま王立科学研究所のメンバーの一人が立ち寄ったのである。

彼は、若き製本職人が電気の問題に関心を寄せていると知り、王立科学研究所での講演を聞く許可を与えた。さっそくファラデーは研究所へおもむき、化学者ハンフリー・デイビーの電気に関する講義を受けた。彼が講義の内容を書き留めたノートをデイビーに見せると、デイビーはその記録の科学的正確さに目を見張った。同時に、ファラデーが一介の製本職人だと聞いてさらに驚いた。

ファラデーが科学の研究に打ちこみたいという希望を打ち明けると、初めのうちデイビーは、そんな考えは捨てるようにと説得した。だがしまいには、若者の一途な情熱に押し切られ、彼を助手として王立科学研究所の一員に迎え入れる。デイビー自身も、元はといえば薬局の店員だったが、彼の業績はこうして、デイビーに劣らず聡明な製本職人ファラデーに受け継がれていくのである。

●どんなことでもきっかけになる

フランスの博物学者キュビエは、きわめて正確で注意深く熱心な観察眼を備えていた。博物学の研究に携わるきっかけとなったのは、子供のころ、ビュフォンの著作の一冊を手にしたことだった。彼はその書物のさし絵を写し取り、本文の解説通りに色を塗って勉強したのである。また、学校の教師からリンネの『自然の分類(System of Nature)』を贈られたが、その本は以後十年以上にわたって彼の図書館代わりを務めた。

キュビエは、十八歳の年にノルマンジー地方のある家の家庭教師に迎えられた。その家はたまたま海岸沿いにあったため、不思議な海生動物の生態を間近に観察できるようになった。ある日、砂浜を散歩していると、一匹のイカが浜辺に打ち寄せられていた。彼はこの奇妙な形の動物に興味を覚えたので、それを解剖しようと家に持ち帰る。

こうして軟体動物の研究が始まった。この研究によって、彼は後の大きな名声を得ることになった。

キュビエは、研究に必要な参考書のたぐいを一冊も持っていなかった。ただ大自然という偉大な書物が、そのページを開けて彼を待っていた。彼は周到な観察力を駆使して現存の海生動物の解剖や化石との比較研究を続け、三年後には海生動物の新しい分類法の基礎を築いた。この研究のおかげで、若き博物学者キュビエの名はしだいに学界の注目を集めるようになったのである。

 - 3章 - 人生の転機を生かす力