自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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向上意欲の前にカベはない!

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●自分で作れる一番大きな「資本」

すぐれた芸術も、他のあらゆる分野と同じように、骨身を惜しまぬ努力の果てにのみ得られる。みごとな絵画にせよ、気品あふれた彫刻にせよ、偶然の産物からはほど遠い。芸術家の熟達した筆使いやノミの運びは、いくら天性の才能に導かれているとはいえ、やはり不断の修練のたまものなのである。

画家レーノルズもこうした考えを信じていた。

「すぐれた芸術は、天賦の才と生まれつきの審美眼、神からの贈りものなどという言葉で形容されるが、実のところは、作者の一途な努力によって得られるのではないだろうか」と彼は述べている。

また、彼の手紙の一筋には次のように書かれている。

「絵画にしろ他のどんな芸術にしろ、卓越した作品を生み出そうと意を決したなら、朝起きてから夜の眠りにつくまで全精神をそこに傾けなければいけない」

別の機会にはこうも語っている。

「芸術家として他に秀でようと思ったら、気が向こうと向くまいと、朝も昼も夜も一心不乱に制作に打ちこむべきだ。それはもはや楽しみの域を超え、苦行と呼ぶにふさわしい」

もちろん、生まれつき才能のない人間は、いくら精一杯努力してみたところですぐれた芸術家にはなれないだろう。だが才能が天性のものだとすれば、その才能をみがき上げ完成させるのは自己修養の力である。しかも万人に平等な機会が与えられている学校教育などより、この自己修養の方がはるかに才能を高める役に立つのはいうまでもない。

芸術家が名声を得るのは、決して幸運や偶然の力ではなく、真摯な努力と勤勉の結果である。芸術家の中には名声によって富を成す者もいるが、富自体が彼らの主要な目的になることはめったにない。

実際、芸術家は若いころから自分をなげうってまで創造活動に励んでいるが、単に金ほしさの人間はそのような苦労に満ちた生活を続けられるわけがない。芸術の神髄を追求するのは喜びであるが、その喜びを得られるだけで芸術家は十分に満足する。富などは、たまたまそれに付随する偶然にすぎない。

志の高い芸術家の多くは、自らの天性のおもむくままに生き、世間への迎合を嫌う。スペインの画家リベラは、高い名声と富を手に入れた後も贅沢な生活に毒されるのを避け、自ら進んで貧しい暮らしに戻り画作に励んだ。

またミケランジェロは、金のために絵を描いている画家についてどう思うか、と問われた時こう答えている。

「なんとしても金持ちになりたいという願いを捨てないかぎり、芸術家としては一生うだつが上がらないだろう」

 - 4章 - 仕事