自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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″生涯を決めた一冊の本”のありがたさ

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●他人の人生で自分を啓発する

時間つぶしのつもりで偶然手にした本の中に、気高い人生を生きた人の手本が描かれている場合がある。それが読む人の心を打ち、思いもよらないすばらしい活動力を呼びさますことすらある。

イグナチウス・ロヨラは軍隊時代、戦で足に重傷を負い療養を余儀なくされた。ある時、気晴らしに書物を読みたいと思い、その旨を看護の者に頼んだ。すると届けられたのが『聖者列伝』であった。彼はこの書物によって心の炎をかき立てられ、新しい宗教組織イエズス会の創設に身を捧げる決意を固めたという。

マルチン・ルターもロヨラ同様、『ヤーン・フスの生涯と著作』という本に触発されたのがきっかけで、宗教改革の大事業に一生をかけることになった。またウォルフは、若いころ『フランシスコ・ザビエルの生涯』を読んで深く感動し、伝道を一生の仕事に選んだ。さらにウィリアム・ケアリーも、布教の仕事に就こうと最初に考えたのは、キャプテン・クックの航海記を読んだためである。

フランシス・ホーナーは、自分が大いに啓発されたり感銘を受けたりした書物の感想を目記や手紙に書き留めておく習慣があった。たとえば画家レーノルズの『美術論』についてはこう書かれている。

「ベーコンの著作を除けば、これほど自己修養の必要性を強く感じさせられた本はない。レーノルズは、人が偉大になるにはどのような道をたどればいいかを懇切ていねいに説いている。”人間にとっては努力がすべてだ″と彼は断じるが、その自信に満ちた口ぶりに読者も、天才は生まれつきではなく努力によって獲得されるものだとの確信を強くする。常に最高をめざそうとする強い情熱が、この本ではごく自然に、しかも雄弁に語られている。こんなにも″扇動的な″書物は他には一冊もないだろう」

ここで注目したいのは、当のレーノルズ自身も、ある画家の伝記を読んで絵の勉強に情熱を燃やしはじめたという事実だ。また、後代の画家ヘイドンもレーノルズの伝記がきっかけで絵の道を志すようになったという。

このように、ある人間の勇気と大志に満ちた生涯は、同じような才能と情熱を持った人々の心に火をともさずにはおかない

すぐれた手本は時代を超えて果てしなくつながり、そのオ能は新たな天才たちによって永遠に受け継がれていく。

 - 9章 - 素晴らしい出会い - 人生の師・人生の友・人生の書