自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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下ばかり見ていては大志は抱けない

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汝自身を敬え

すぐれた書物は確かに有益で、学ぶべき点が多い。だがそれも、精神をみがき上げる方法の一つにすぎない。人格の形成には、むしろ実地に体験したりすばらしい手本に学んだりするほうが効果が大きいだろう。

真の教育の目的とは、他人の思想や考えをうのみにしたり頭に詰めこんだりすることではない。大切なのは知力を高め、有意義な人生を送れるよう努めることだ。そこでは、知識の量より知識を得る目的のほうがはるかに重要な問題である。われわれは、知恵を発達させ、人格を高め、より豊かで幸福で価値ある人生を送るために学ぶべきだ。知識は、人生の高い目的をより有効に追求するための活力源でなくてはならない。

われわれは、自分が「いかにあるべきか」、そして「何をなすべきか」を自分自身で選び取る必要がある。単なる読書にうつつをぬかし、他人の人間像や行動をほめたりけなしたりしてそれで満足というのでは困る。すぐれた知識はそのまま自分の生活に反映し、すぐれた思考はそのまま自分の行動に結びつくはずだ。

このように実践的な知恵は、自己修養と克己心を通じてのみ得られる。この両者の根底には自尊心が横たわっている。希望も自尊心から生まれる。希望は力の伴侶であり成功の母だ。切に望む者はどんな奇跡でも成し遂げられる。

自尊心とは、人間が身にまとう最も貴い衣装であり、何ものにもまして精神を奮い立たせる。「汝自身を敬え」とはピタゴラスが弟子に命じた言葉だが、自尊心という気高い理念に支えられた人間は確かに、決して官能におぼれて身をけがしたり、卑屈な考えで心を汚したりはしない。日常生活のすみずみまで自尊心が行き渡れば、それは清潔や沈着冷静、貞操、道義心などあらゆる美徳の基礎となるだろう。

「慎み深く正しい自尊心は、立派で有意義な業績を生む土壌であり源泉である」と、詩人ミルトンは語っている。自分をさげすむ人間は、他人からも軽蔑される。卑屈な心を持っていれば行動にもそれが現われる。

下ばかり見ていては、人は大志を抱けない。向上したいと本心から望むなら、顔を上げなくてはいけない。

自尊心は、どんな人にも心の支えとなる。自尊心さえあれば、貧困は取り除かれ、苦しい生活にも一条の明るい光がさしこんでくる。いくら貧しくとも誇りを高く保ち、誘惑をものともせず、身を落とすような卑しい行為をもきっぱり拒絶している人間を見るにつけ、われわれは尊敬の念を禁じ得ない。

 - 8章 - 自己修養