自助論 全エピソードまとめ

自らを律し、成功を勝ち取ってきたサッカー日本代表の本田圭佑選手。彼の愛読書であるサミュエル・スマイルズの自助論の全エピソードを掲載しています。

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チャンスをとらえ、偶然を何かの目的に利用していく

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●「独立独歩」の人に与えられる勝機

チャンスをとらえ、偶然を何かの目的に利用していくところに成功の大きな秘密が隠されている。

ジョンソンは、天才的な力のことを「広い分野を包みこむ大きな精神が、偶然ある特定の方向へ向けられたものである」と定義した。独力で活路を切り拓こうとする人間には、それにふさわしい好機が必ず与えられる。手近にチャンスがなくとも、彼らはそれを自力で生み出していくのだ。

科学や芸術で大きな業績を収めたのは、大学で学び博物館や美術館などに出入りできるような恵まれた環境に暮らしてきた人間ではない。偉大な技術者や発明家は、決して専門の研究所で教育を受けたわけではない。この意味では、便利な施設や設備よりも、むしろ必要こそが発明の母であり、困難こそが偉大な成果を生むための真の学校であるといえるだろう。

すぐれた研究者の中には、実にありきたりの器具しか持っていなかったものも多い。だが、「下手の道具選び」といわれるように、立派な成果を生むのは器具の善し悪しではなく、その人自身の熟練した技術とねばり強さなのである。

イギリスの画家オーピーは、色彩の配合にみごとな手腕を発揮するが、その秘訣を問われたとき、「私は、絵の具に頭を混ぜ合わせるのです」と答えたという。スコットランドの科学者ファーガソンは、ありふれたペンナイフ一本を自在に操って、驚くほど精巧な木製時計などを作り上げた。誰しもペンナイフの一本くらいは持っているが、かといって誰もがファーガソンのようになれるわけではない。

化学者ブラックは、水を入れたナベと二本の寒暖計だけを使って潜熱(融解熱や気化熱のこと)を発見した。光の組成や色の起源を解明したニュートンにしても、一組のプリズムとレンズ、それに一枚の厚紙を利用したにすぎない。

数多くの発見によって科学の進歩に貢献したウラストンのところへ、あるとき外国の高名な学者が訪ねてきて、研究室を見せてほしいと頼んだ。ウラストンは小さな書斎に客を通したが、その机には古い茶盆が置かれ、中には懐中時計のふたガラスが、二、三個と試験紙、小さな天びんばかり、吹管(化学の実験用具、ガスの炎に空気を吹きつけるための、直角に曲がった金属製の管)が入っていた。彼はそれらの器具を指さしながらいった。

「これが私の研究室のすべてです」

画家ウィルキーにとっては、燃えさしの木切れと納屋の戸が鉛筆やカンバス代わりだった。木版画家ビュイックも、若いころは小屋の壁に白黒で絵を描いて練習した。ベンジャミン・ウェストが使った最初の絵筆は、自分でネコの尻尾の毛から作ったものだった。

フランクリンは二本の棒と絹のハンカチでタコを作り、それを上げて雷雲から電気を取ることに成功した。ワットにしても、解剖前の動脈注射に用いる注射器のお古を譲り受けて、初めて蒸気機関の模型を作製したという。このような例には枚挙のいとまがない。

 - 3章 - 人生の転機を生かす力